ちちのこと

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夢で、死んだ父に会った。すっかり忘れているはずの彼の声のぬくもりも、抱きしめたときのやわらかさも、ほおずりしたときの髭のチクチクさえも、そこでは確かに感じ取れて、まるで夢じゃないようだった。父さんのこと、どうして忘れてしまうんだろう、この…

0726

好きなひとができた。残りの人生はそのひとのそばで生きていくことを決めた。だからあなたとはもうお別れだ。もう娘でもなければ何でもない。と母親に言われる夢を見た。生きてきた中でいちばん最悪な夢だ。10年以上前に父親を亡くしたわたしにはほとんど…

0408

こないだ始めたばかりのアルバイト先から下宿に帰るためのバスが止まるバス停までの道中にお好み焼き屋さんがある。アルバイトの終わる昼過ぎにその店の前を通ると、ふ、とソースのにおいが香る。今日、慣れ親しんでいるはずのそのにおいに生涯で初めて吐き…